社会民主主義って聞いたことありますか?どんなものなのでしょうか。
社会主義、資本主義、共産主義、民主主義はよく聞いても、社会民主主義についてはよくわからない人も多いのではないでしょうか。
社会民主主義について、わかりやすく細かく紹介していきます。
この記事の目次
社会民主主義ってどんな思想?特徴?

社会民主主義は、経済格差と貧困をなくすことを目的とし、富の再分配の平等を目指している政治思想です。民主主義なので、国の議会を通します。そのうえで、平和的に社会主義を実現するものです。労働者の利益を守ることを優先していて、支持者は基本的に労働者になります。
社会民主主義は、欧州で生まれ、西欧や北欧諸国で発展してきました。欧州各国では、与党や野党に社会民主主義の政党が多くあります。他の地域にもありますが、規模や主張が異なるため、欧州の社会民主主義が注目されることが多いです。
欧州の社会民主主義の状況から、社会民主主義は福祉国家の政治と考えられることもあります。
共産主義と混同されがちですが、少し異なります。社会民主主義は、議会制民主主義の尊重や斬新的革命を主張しています。それに対し、共産主義は、無産階級の革命的手段で国家を築いていくこと主張をしています。それらで区別をされることが多いでしょう。
他の主義との違いは何?
世界には様々の経済システムがあります。社会民主主義を知るためには、他の経済システムの思想について知ることがかかせません。
ここでは、社会主義、共産主義、資本主義について説明します。
社会主義とは
社会主義は、すべての人々が平等に過ごせる社会を実現することを目的としています。
「生産手段」を社会がすべて共有し、その利益をみんなで分配します。人々は能力に応じて働き、労働に応じて分配されます。そのため、理論的には失業や低収入で苦しむことがないといわれています。
国が経済活動を管理しているため、個人が利益を追い求めることはできません。
ただし、世界の経済が不安定なとき、恐慌が起こったときなどは、安定した収入が見込まれます。
個人競争がないため、モチベーションが上がらず、経済活動が縮小することがあります。
現在、社会主義を行っている国は、中華人民共和国、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、ベトナム、ラオス、キューバなどの一部です。
共産主義とは
共産主義は、社会主義思想が発展したものといわれています。そのため、社会主義は共産主義の途中経過ともいわれています。
資本は個人のものではない、全体で共有するものという基本的思想は同じです。
共産主義は、社会主義よりも、より発展していて豊か、階級がない状態を指しています。社会主義よりも理想に近いものといえるでしょう。
さらに社会主義とは違い、国民がすべてを共有することによって、政府すら必要ないという考え方をします。
ただし、今まで共産主義として政治を維持、運営してきた国はありません。
資本主義とは
資本主義は、社会主義と共産主義と大きく異なります。
資本主義は、利益を追い求めることによって得られる経済のシステムです。企業が労働者を雇って、より多くの利益を出すことが目的です。
社会主義や共産主義が、利益を皆で共有することに対し、資本主義では個人や企業が自由に資本を持ちます。
自由に望む職を選ぶことができ、階級や身分には縛られないため、各個人が自由な経済活動を行うことが可能です。
そのため、自己責任を負うことも多くなりますが、切磋琢磨し、経済発展につながります。デメリットは、失業や貧富の差が生まれることです。世界情勢の影響も受けやすくなります。
民主主義とは
社会主義、共産主義、資本主義と民主主義のカテゴリーはまったく違うものです。
社会主義、共産主義、資本主義が経済システムなのに対し、民主主義は政治システムの一種です。
民主主義は、国民が主権をもつことで政治に参加し、国民の意思によって国を動かすシステムです。多くの民意にそって、多数決で物事を決めます。
民主主義には、「直接民主制」と「間接民主制」があり、多くの国では「間接民主制」を採用しています。
民主主義の対になるのは、絶対君主制、独裁制などです。
こちらもCHECK
-
-
日本の政治体制と民主主義に詳しく解説!【三権分立や選挙制度など】
小学校、中学校、高校、大学などで何度も出てきたこの言葉。この言葉を知らない人はほとんどいないことでしょう。 しかし何のためにこの民主主義がとられているのか、この体制はどのようなものなのか、と聞かれると ...
続きを見る
各国の社会民主主義について
地域によって社会民主主義の在り方は違います。世界で社会民主主義が強いのは、圧倒的に欧州です。
欧州とともに、各地域の状況についてみていきましょう。
欧州(北欧・西欧)
経済活動においては、自由競争の市場を大切し、それによって起こる弊害や不適切な状態を放置せずに、政府が監視・管理・規制・禁止・介入を行っています。
また、貧富の格差をなくすために、所得再分配を重視しています。労働運動にも積極的で、労働組合の役割も重要視されています。
社会政策においては、社会保障や福祉に力を入れています。そのため、福祉国家と呼ばれています。
医療、教育、労働、高齢者などへの政策にも力を入れているので、何かあったときや将来に安心して過ごすことができます。
税金も高負担ですが、社会保障がしっかりされているため、他の地域に比べて不満が少ない様子も伺えます。
北欧では、社会民主主義政党が長期間にわたって政権を運営してきました。それが一気に社会保障や福祉政策を推進させた理由です。
また、西欧では、社会民主主義政党が政権交代を繰り返す二大勢力として、政治活動をしています。(代表例:イギリスの労働党、ドイツのドイツ社会民主党)
こちらもCHECK
-
-
二大政党制ってどんな制度なの?成立からアメリカの二大政党制などわかりやすく解説!
4年に一度、オリンピックのある年にアメリカ大統領選が行われます。 今年、2020年世界が注目する選挙戦は新型コロナウィルスが猛威を振るい、人類が未知の恐怖にさらされている中、国民の熱狂や候補者の演説を ...
続きを見る
アジア
アジアでは、大韓民国、シンガポール、インド、スリランカ、ネパール、パキスタンなどに社会民主主義政党があります。欧州に比べて規模は大きくなく、独自色も強いです。
日本では、戦後に日本社会党や民社党があり、一定の勢力がありましたが、現在は社会民主党が少数の議席を確保するのみで、規模は大きくありません。
こちらもCHECK
-
-
社会党ってどんな政党?その主義主張と歴史をわかりやすく解説!
皆さんは「日本社会党(社会党)」という政党が昔あったことをご存知でしょうか?1996年に社会民主党(社民党)に改名したので、今となっては日本史の授業で習うくらいかもしれません。 しかし、戦後の日本では ...
続きを見る
アメリカ大陸
アメリカ合衆国では、社会民主主義政党はあまり有力ではありません。
カナダでは、欧州型社会民主主義政党に近い政党があり、二大勢力として政治を行っています。
ラテンアメリカ各国には、社会民主主義政党がたくさんあります。長い間、一般大衆の影響が強い独自のものが多くありましたが、現在は国家主義の強いものも増えてきました。
アフリカ大陸
アフリカ諸国には、社会民主主義政党はあまりありません。植民地のころの影響で形成されたものや部族の利益のために結成されたものが多いです。
社会民主主義の問題点
社会民主主義の政策は、国家が責任をもって、経済格差の縮小やすべての人々の生活を保障するというものです。
すべての人が対象のため、貧困層はもちろんのこと、豊かな層にも分配されます。
国民全員の社会保障や福祉政策を税金によって守るため、税金や社会保険料が高くなり、国民の負担が増えます。
また、国が財政赤字になると、政策への資金が足りなくなっていきます。そのため、最初の政策が永遠に続くのではなく、変更を余儀なくされることもあります。
まとめ
社会民主主義は、いわゆる福祉国家で多く行われている経済・政治システムです。欧州各国では多くみられますが、その他の地域ではなかなか成功していません。
日本でも欧州のような社会保障・福祉政策を望む声が多く聞かれますが、なかなか実現しないのが現状です。今後も社会民主主義の行方から目が離せませんね!