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経済用語

新自由主義ってどんな主義?背景から日本の例をわかりやすく解説!

2020年8月26日

すこし前まで、デフレや年越し派遣村などが話題になっていましたが、この不況の根源として語られていたのが新自由主義と呼ばれる一連の経済政策でした。現在日本でも、もともと国営企業が次々と民営化していますが、その考えの根幹にあるのがこの新自由主義によるものでした。

今回はそんな今の日本にも大きく関わる新自由主義についてわかりやすく解説していきます!

新自由主義の概要

新自由主義(neoliberalism、ネオリベラリズム)とは、主要産業が国有化され、公共事業が広く行われる「大きな政府」をやめ、政府などによる規制を最小化し、民間の自由競争を通して市場を活性化すべきであるという主張を持っており、「小さな政府、市場の自由」を目指す考え方です。

この考え方はイギリス・アメリカ・日本を中心とした国々で採用されました。

歴史的背景

ケインズの修正資本主義

古典的な経済学では、市場に全てを任せることで経済はうまくいき、価格の調整を通じて、作っただけモノは売れるはずで、供給不足が不況を生み出すという考え方が主流でした。

しかし、1929年に始まった世界恐慌による不況では、市場に任せるだけでは不況から抜け出せないと考えられ始めました。ここで登場したのがケインズの考え方です。ケインズは供給不足ではなく、需要が足りないから不況になると考え、需要を作り出すための減税や公共投資を行うことにより、世の中にお金を行き渡らせ、消費を活発にする政策を主張しました。このケインズ的政策を取り入れたのが、米国大統領フランクリン・ルーズベルトで、有名なニューディール政策を行いました。この政策が功を奏し、米国は不況から脱却し、戦後の経済繁栄につながっていきました。

新自由主義の台頭

第二次世界大戦後は、政府が需要を管理し、失業率を押さえる、ケインズ的政策が一般的となりました。

しかし、1970年代のオイルショックを契機に経済の停滞、失業者の増加が発生し、1980年代に至っては、政府における財政赤字の深刻な累積、非効率な官僚主義的ななどが大きな問題となってきました。これらの状況に対して、政府の規模が大きくなったことで非効率化が進み、多くの規制や税の負担が自由な経済活動を妨げていることに原因があるのだという考えが広まりました。

こうして、規制を緩和し、民間の自由な活力に任せて成長を促進させる新自由主義的な経済政策が世界的に主流となっていきました。

主な海外での新自由主義的政策

ウィリアムズバーグ・サミット(1983年)のG7首脳陣。右から2番目がサッチャーで、中曽根康弘・レーガンが続いている。

英国サッチャー首相の政策「サッチャリズム」

20世紀のイギリスは、「ゆりかごから墓場まで」という言葉に代表されるように「大きな政府」による福祉で守られた国でした。その反面、1970年代頃から政府の支出が増加し、財政赤字が拡大し、経済停滞が深刻化してきていました。このような状況を打開するために、新自由主義的政策に転換したのが「鉄の女」ことマーガレット・サッチャー首相でした。1980年代、サッチャー政権が誕生すると「サッチャリズム」の名のもとに電気、ガス、水道、航空といった国営事業が次々と民営化され、また、財政支出の削減及び規制緩和を大きく進めました。

米国レーガン大統領の政策「レーガノミクス」

1980年代当時、米国はインフレと高い失業に苦しんでいました。「レーガノミクス」では減税を行って家計の消費支出の活性化を狙い、規制緩和を進めて市場経済の回復を目指しました。また、社会保障費の縮小により財政収支の改善を試み、軍事支出を拡大することで強いアメリカを復活させることを目指しました。

日本での自由主義的政策

中曽根首相の「行政の民営化」

サッチャー首相、レーガン大統領とほぼ時を同じくして、日本での新自由主義的政策を初めて行った中曽根内閣では、「行政の民営化」が大きく推進されました。具体的には、現在では民間企業となっている、日本専売公社(現JT)、日本国有鉄道(現JR)、日本電信電話公社(現NTT)等の民営化です。

 小泉首相の「聖域なき構造改革」

小泉首相のもとにおいては、「聖域なき構造改革」をスローガンに、郵政事業と道路四公団の民営化等、小さな政府の実現を目指す新自由主義の色濃い政策を行いました。また、地方への税源の移譲や、肥大する医療費負担軽減のための医療制度改革も行いました。さらに、労働者派遣法の規制緩和を行い、派遣社員として働く人の数が増加することとなりました。

新自由主義のメリット・デメリット

新自由主義のメリット

規制緩和よる経済の活性化

新自由主義の長所としては、まず、政府による規制がなくなり、市場の制限が緩和され、参入する企業が増えることによる、経済の活性化が挙げられます。規制緩和による新規参入の例としては、航空業でのLCCとよばれる格安航空会社の参入があり、航空運賃の値下げにより利用者は大きな恩恵を受けることができました。また、コンビニに設置されたATMでお金をおろせるのも規制緩和のおかげです。

自由競争によるより良い価格・サービスの供給

また、さまざまな国営企業を民営化することにより、自由競争が生まれて、より安く質の良いサービスが提供されます。身近な例でいえば日本電信電話公社の民営化でNTTグループが誕生しましたが、それまで官営で運営されていた公衆電気通信事業は自由化され、日本テレコム(現・ソフトバンク)や第二電電(現・KDDI)が参入したことにより、より良いサービスや価格を求めて通信会社を自由に選べるようになりました。

行政のスリム化

さらに、民営化などで民間に任せた業務については、国の仕事が減るので税金の軽減や、公務員数の削減ができます。そして、民営化した企業が収益を上げることによって、そこから国への税収入の増加も期待できます。

新自由主義のデメリット

 持てる者と持たざる者との格差の拡大

新自由主義の短所の中で一番問題視されているのが、格差問題です。小泉政権下での規制緩和の一つとして派遣法改正によって、それ以前はできなかった、製造業などの日本経済の中核を担ってきた分野での派遣労働ができるようになりました。一般的に非正規雇用で働く派遣労働者は、正社員よりも安い賃金で働くことになり、大企業は彼らを雇うことにより、大幅な人件費のコストカットを実現し、多額の利益をあげることができるようになりました。本来ならばこれら大企業の利益は一般の企業や国民に還元して経済を回していくのが新自由主義的な理念ですが、実情は巨額の企業内の内部留保等に回され、非正規雇用で働く国民のもとには多くは還元されていません。そして、一部の大企業の経営者層や社員、投資家等と、非正規雇用者との間には、大きな収入格差が生まれてしまいました。

 競走激化によるデフレリスク

自由競争による経済活性化及び価格の値下げという長所の反面、価格競争が激化するとデフレが起こるリスクがあります。牛丼チェーンの価格競争がその一例です。牛丼チェーン大手が激しく値下げ競争を繰り返した結果、結局自らの経営を危うくする状況に陥りました。自由な価格競争による値下がりは消費者にとってはありがたいものですが、行き過ぎた価格競争は業界全体にとってマイナスの影響を与える恐れがあります。企業業績が悪化することで給料が下がり、最悪の場合は会社が倒産して失業者の増加につながり、結果として経済を悪化させるリスクとなります。

非常事態時の対応

官から民へ業務・権限を委譲することにより、行政組織のスリム化等は実現しましたが、感染症・大規模災害等非常事態時において採算を度外視した迅速かつ大量な物的・人的資源の投入ができないという問題があります。現在のコロナ禍での保健師不足も、小泉首相時代の医療制度改革によって多数の保健所が閉鎖されたことに起因するのではないかという批判も起きています。

新自由主義の今後

各国の政府が取ってきた新自由主義的政策は、政策だけではなく、他国の経済動向等、外的な要因にも左右されるので、簡単には成否を判断できず、賛否両論あるのは事実です。しかし、新自由主義以前には国家が管理しきた産業や市場が、徐々に民間の手にゆだねられてきたことは確かです。そして、国民は福祉や雇用の保障等国家の手厚い庇護を捨て、自由と責任を受け取り、経済的勝者となりうるチャンスを掴んできました。健康でかつ知識も仕事の能力もある人にとっては、理想的な主義であると言えるでしょう。一方で、自身の障害や病気、家族介護や子育て、教育の機会が与えられないなど、色々事情を抱えた弱い立場の人達がいるのも事実です。国家によって雇用が守られる産業が減り、福祉も手薄くなったら、真っ先にこのような弱い立場の人たちにしわ寄せが行きます。事実現在のコロナ禍においては更なる格差の拡大とそれに伴う社会の分断が世界的に大きな問題になっています。

しかしながら、かつての「大きな政府」に戻り、国家によってすべての人を手厚い庇護のもとの置くことを目指すのは、財政面等からも現実的には不可能です。民間へ市場を開いたことによって格差が広がったという批判もありますが、企業がイニシアティブを取って、働く人自身が誰もが協働できる新しい世の中を作り上げていく時代が来ているのかもしれません。更に、コロナの今後の終息状況及びその経済に与える影響によって、各国の政策スタンスは変わっていくことが予想されます。特に今秋の米国大統領選挙の結果次第では大きな新しい流れが生まれるかもしれません。

民主党大統領候補のバイデン氏は指名受諾演説において、大型環境投資、手厚い社会保障や格差是正策など、かつての「大きな政府」をイメージする財政的に大盤振る舞いの印象が強い政策を掲げています。一方、日本においても、中曽根首相に始まり、小泉首相、現在の安倍首相と新自由主義的政策が受け継がれてきましたが、格差の拡大等の負の側面がコロナ禍の元大きく顕在化してきており、政権の行方と共に新しい政策へのかじ取りも注視していく必要があると思います。

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