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違憲立法審査権とは何?その効力や今後の課題についてわかりやすく解説!!

2020年12月25日

テレビのニュースや新聞などで「違憲立法審査権」という言葉を耳にすることがあります。

2019年の7月に行われた参議院選挙について、四国の3選挙区で有権者1人当たりの「1票の重み」に違いが出る「1票の格差」があるとして訴訟が起こされ、同年の10月に高松高裁で「違憲状態」という判決が出ました。

実はこの訴訟は、違憲立法審査権と大きな関係があります。

しかし多くの方は、この訴訟内容や「違憲立法審査権」という言葉のフレーズから、何となく「憲法に関する制度」ということが分かるだけで、詳しい内容について知らない方が多いのではないでしょうか。

そこで違憲立法審査権がどのような制度なのか、その効力や今後の課題などについて分かりやすくお伝えしていきます。

違憲立法審査権とは

違憲立法審査権とは国の様々な機関が行うことに対して、それが違憲に値するかどうかを審査して、違憲ならばその行為(法令・行政処分など)を裁判所が無効と宣言する権限です。

これは憲法保障制度の1つ違憲立法審査制で、最高裁判所に行使が認められている権限であり、それについて日本国憲法では次の第81条に定められています。

メモ

日本国憲法 第八十一条

最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

違憲立法審査権は日本以外の国々でも設けられており、その起源は19世紀までさかのぼります。

違憲立法審査権の歴史

違憲立法審査権について、その歴史をさかのぼると19世紀のアメリカ合衆国が起源になります。

1803年のマーベリ一対マディソン事件で、第4代合衆国最高裁判所長官のマーシャルが「連邦憲法は国の最高法規なので、違憲となる連邦法は無効になる」と判決しました。

そして、この判決が世界で初めてとなる違憲立法審査権の誕生になります。

20世紀に入ると2度も起きた世界大戦の経験から、憲法を違反や侵害などの危険から守るために、ヨーロッパ諸国などで違憲立法審査権が普及していきました。

日本では戦前の大日本帝国憲法の中に違憲立法審査権は存在していませんでしたが、戦後の日本国憲法制定に際して、世界の流れに乗り違憲立法審査権が設けられたのです。

違憲立法審査権の種類

世界各国で設けられている違憲立法審査権の制度は、大きく2種類に分けられます。それは裁判所型と、それ以外の形式です。

それ以外の例として代表的なのがフランスの制度。

フランスの場合は、政治機関である憲法院が違憲審査を行う制度になっています。

そして裁判所型は普通裁判所と特別裁判所のどちらかで、違憲立法審査権を行使する2つの制度に分けられます。

普通裁判所の場合は、通常の民事事件・刑事事件の裁判に付随して、それに関わる法令などの合憲性について審査する制度です。また、この制度を付随的違憲審査制と呼び、アメリカやラテンアメリカの諸国、カナダ、オーストラリア、イギリスなどで設けられています。

もう1つの特別裁判所では憲法問題だけを扱い、具体的な事件の審査だけでなく、抽象的に法令を合憲か否かを審査します。

そして、この制度で有名なのがドイツ。

ドイツでは特別裁判所として憲法裁判所を設けています。

ドイツのほかに特別裁判所を設置している国には、イタリア、オーストリアなどがあります。

では日本の違憲立法審査権は、どの制度に属しているのでしょうか。

日本の違憲立法審査権は付随的違憲審査制

日本の違憲立法審査権は、アメリカと同じ付随的違憲審査制に属しています。

しかし日本の場合は憲法が制定された当初に、どの制度に属しているのか論争されていました。

そして1952年の警察予備隊違憲訴訟で、その論争に終止符が打たれます。

この裁判では警察予備隊(現自衛隊)の設置が憲法第9条に違反しているとして、無効が求められて訴訟が起こされました。

現在も自衛隊と憲法第9条に関する訴訟は、時折り起こされているので普通の裁判のように思ってしまいますが、その内容を見ると、この裁判は憲法問題であり、それを普通裁判所である最高裁で審議しています。

これにより当時はハッキリしていなかった日本の違憲立法審査権が、この裁判内容からアメリカと同じの付随的違憲審査制に属していることが分かったのです。

そして、これ以降は冒頭で紹介した「1票の格差」のように下級裁判所でも、しばしば裁判で違憲立法審査権が行使されるようになりました。

日本で違憲判決が出た場合の効力

これまで日本では数多くの違憲を問う訴訟が起こされて、裁判が行われてきました。では違憲判決が出た場合、その対象となる法令などはどうなるのでしょうか。

日本で違憲判決が出された場合の効力は、個別効力になります。つまり、その裁判内容だけに限定して不適用になるのです。

しかし限定的とは言っても、過去にはその判決をくみ取って行政や立法が対応するケースがありました。

例えば 、1975年の薬事法の薬局開設距離制限規定が、憲法第22条の保障する職業選択の自由に違反し無効と宣言した判決です。

この場合、限定的に薬局開設距離制限規定を無効にするだけでよかったのですが、このときの国会はこの判決を受け入れて速やかに規定を廃止しました。

そのため個別効力とはいっても、行政や立法の努力で一般的な効力を生み出すケースもあり、社会を良い方向へ変えていく影響力を持っているので、違憲立法審査権の存在は大きいといえます。

違憲立法審査権の今後について

これまで日本の最高裁で出された違憲判決は「10件」です。

最高裁は約70年の歴史を誇っていますが、それを考えると「少ない」という印象を受けます。

そして、その印象は間違いではなく、諸外国の判例と比べても日本の違憲判決は少ないのです。例えば日本と同じ付随的違憲審査制のアメリカでは、2014年までに連邦最高裁が出した違憲判決は「117件」もあります。

またドイツでは、2013年までに連邦憲法裁判所が「476件」の違憲判決を出しています。この両国の違憲判決数と比べても、明らかに日本は少ないです。

では、なぜ日本は違憲判決が少ないのでしょうか。

理由その① 調査官制度

調査官とは、裁判官の命令で事件の審理や裁判に必要な調査などを行い、1つの事件に1人の調査官が担当し報告書を作成します。(ここでの調査官は最高裁判所の調査官のことです。)

調査官は日本だけでなく、違憲立法審査権があるほとんどの国に存在している職です。アメリカでは連邦最高裁に 9人の判事がおり、1人の判事につき4人ほどの調査官がつきます。

そして1人の判事と複数の調査官がチームを形成し、合計9チームが競い合い判決について審議をしていきます。

それに対して日本の場合は、1人の調査官が作成した報告書を最高裁判事が承認するかどうかで判決がされるのです。

つまり日本ではアメリカのように約36人の専門家が関わって審議する体制ではなく、1人の調査官が作成した報告書だけをもとに判決を出しているので、議論が深まらず違憲判決が出にくい結果につながっています。

理由その② 日本の最高裁に憲法の専門家が欠けている

最高裁には憲法の専門家はおらず、もし事件に憲法問題が入ってきた場合は担当の調査官が、その度に研究するといった状態です。

「違憲立法審査権を行使すると言いながら、最高裁のあの建物の中に憲法を研究している人が1人もいない」という状態なのです。

そのため、違憲判決が少ないことにも納得がいきます。ではこの現状を解決するためには、どうすればいいのでしょうか。

憲法裁判所の設置

この理由は憲法裁判所の設置によって裁判官が 365日憲法を見ることができるので、現在よりも法令などの合憲性を高めることが可能になるからです。
また憲法裁判所が設置されなくても、カナダで実施されている「参照意見制度」という方法もあります。
この制度は具体的な事件から離れて法令が合憲なのかを、内閣が連邦最高裁に判断を求めることができる制度です。

ただし日本でこの制度を採用した場合に最高裁への負担が大きくなるので、最高裁の仕組みを改革する必要があります。

つまり、どちらにしても「日本は違憲判決が少ない」という課題の解決には、憲法専門の機関および人が必要だということです。

そして、これは日本の司法にとって、これから解決が求められるテーマだといえるでしょう。

まとめ

違憲立法審査権は、法令などの合憲性を保つために必要な制度です。

違憲立法審査権の制度は、裁判所型とフランスのようにそれ以外の方式とに分けられます。

そして裁判所型には普通裁判所と特別裁判所があり、アメリカと同じの普通裁判所で違憲立法審査権を行使できる付随的違憲審査制を日本は設けています。

これまで日本の最高裁では10件の違憲判決が出されました。

しかし、その数は諸外国と比べると少ないです。

その理由には、最高裁で一つの裁判に関わる調査官の人数が1人だけという少なさや、最高裁に憲法の専門家がいないという問題から、違憲判決が少ない結果につながっています。

「違憲判決が少ない」という課題の解決には、「憲法裁判所の設置」やカナダのような「参照意見制度」が有効ですが、現在の状況では実現しそうにありません。

違憲立法審査権は行政の行為や法令の合憲性と、社会の秩序を保つために存在しているので、私たち国民にとって重要な制度です。

そして今後、それらの合憲性を保ち、高めていくためには「違憲判決が少ない」という課題の解決は必要であり、これは未来に向けて日本の司法が解決しなければならないテーマだといえるでしょう。

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