道州制…しばらく前にさんざん聞いた言葉ですが、道州制についての議論はどうなっている
のでしょうか。そもそもなぜ道州制が議論されるに至ったのか、その背景に何があるのか、
メリット、デメリットも併せて見ていきましょう。
道州制が注目された小泉構造改革時代
現在、日本の国は47都道府県で構成されています。北海道、東京都、大阪府と京都府、ここに43の県が連なっています。この府や県という枠組みが作られたのが明治維新以後ですから、ずいぶん長きに渡って国のかたちを維持してきたのですね。
しかし時代が変われば、望ましい国のかたちも変わります。交通網の発達や海外との国境を越えたビジネスの進展。インターネットの普及がグローバリゼーションを後押しします。
世界中どこにいても瞬時に他国とつながることができる時代のビジネスはスピードが命です。
従来の県や国境という枠組みを越えて、もう一度枠組みを考え直した方が良さそうだし効率的だというわけですね。東京一極集中と避けられない少子高齢化もう一つ重要なのが少子高齢化です。
日本はすでにこの渦中にあるのですが、東京などの都市部に人口が集中する一方で、地方の人口減少は進行するばかり。このままでは自治体そのものが消滅しかねないという切実な危機感もあったでしょう。
小泉内閣が掲げる「構造改革」「官から民へ」「小さな政府」これらの改革へのキーワードが地方分権を柱とした改革気運を生み、道州制を後押ししたと言えるでしょう。
では道州制って何?

現在私たち国民に一番身近な行政として市町村があります。
市町村を束ねるのが県で43あります(北海道と東京都、府以外)。
この行政の枠組みを、もう少し大きな枠組みで括ってみよう。これが道州制のかたち、枠組みの話で、10前後の区割り案など、さまざまな提案がなされています。この区割りは経済的な結びつきや人の移動が多い近隣県をベースに日本全体をエリアで分け、一つの大きな行政の単位として権限や財源をエリアに移譲していこうという壮大なもの。
日本という国のあり方、国のかたちを大きく変える可能性を秘めているのです。
道州制のメリットは?
では行政の単位を県からエリア(道や州などのエリア)にするとどんなメリットがあるのでしょうか。
よく言われるのが公務員数の削減、国の出先機関と県などによる二重行政がなくなることによる行政の効率化です。
人口減少と税収減が現実としてある限り、これは待ったなしの問題です。
さらにエリア単位で行政の企画立案や政策決定を行うことで国による全国一律な施策ではない、真にエリアに有用な政策を臨機応変に行うことが可能になります。
現在一部地方で行われている子育てに優しいエリア、医療に特化したエリアなど、より地方独自の特色を打ち出しやすくなると言えます。
道州制のデメリットとは?
道州制については、もちろんデメリットも議論されています。
デメリットとしてよくあげられるのが、強いエリアと弱いエリアの格差が拡大するというもの。この場合の強い弱いは財政基盤や観光資源などを指すと思われますが、現在の枠組みで危ういのならより広域連合でアイデアを練る方が先が明るいとも思えます。
加えて言われるのが、地域に密着した行政を行うのが難しくなるというもの。
管轄エリアが広がることからもっともな気もしますが、人口が減少していく中でいかに行政の充実と質を維持していくかはいずれ直面しなければならない問題です。
また二重行政による無駄をカットした分を、真に必要なところへ振り向ける余力ができる可能性もあります。
大阪都構想の行方
二重行政による行政の効率化という面で、参考にしたいのが大阪都構想です。大阪府と大阪市による重複行政を見直し大阪府に一本化、新たに区を創設して行政を行うという大阪維新案です。
道州制とは多少異なりますが、行政のありようを変えるという点で11月に予定されている住民投票の行方が注目されるところです。
道州制については賛否両論さまざまです。
解決しなければならない課題も多く見受けられ、ひと筋縄ではいきません。世界を襲ったコロナの影響も見極める必要があります。しかし日本の前に横たわる少子高齢化などの問題は消えてなくなるわけではありませんから、いずれ再び向き合わなければならないことになるでしょう。