銀行といえば、何を思いつくでしょうか。もちろん、みなさんが普段利用する銀行を思いつくでしょう。しかしその銀行は市中銀行。
例えばみずほ銀行や三菱UFJ銀行などがそれにあたりますし、地方にも銀行はたくさんあります。金融庁から免許をもらって営業している銀行です。しかし日本には、もう一つ「日本銀行」という特別な銀行があります。
この銀行は、みなさんが利用することはできません。利用しているのは、市中の銀行や国です。
今回はそんな日本を支えている特別な銀行である日本銀行の役割についてみていこうと思います。
この記事の目次
そもそも日本銀行とは?

日本銀行は1882年に東京日本橋に設立された日本の中央銀行です。
ちなみに日本国政府からは独立しており、公的資本と民間資本により存立する状態となっています。
ちなみに日本銀行のトップは総裁と呼ばれています。自民党と同じですね。
三つの役割
日本銀行の主な役割は「発券銀行」「銀行の銀行」「政府の銀行」になります。
あとは、日本銀行は、日本経済を潤滑にしていく使命があり、景気のバランスを注視し、コントロールしていきます。そこで、「公定歩合」を上げたり下げたり、「公開市場操作」をしたり、日本銀行が判断して景気を調整します。
さらに、日本銀行は景気の動向をみるため、市中銀行や民間企業にアンケートをとり、その結果を統計で公表したりしています。
次はそんな日本銀行の役割をみていきましょう。
発券銀行
皆さんが普段使っている「お金」。これは、日本銀行が作り、発券しています。紙幣をよく見ると、日本銀行券と書かれています。これは、唯一日本銀行ができます。硬貨(500円・100円・50円・10円・5円・1円)は造幣局という機関で国が発行しています。
銀行の銀行
日本銀行の中に、市中銀行(例えば、三井住友銀行)の金融機関の口座が作られています。これが、「銀行の銀行」といわれる所以です。市中銀行がみなさんから集めてきた預金の一部を預けたり、または日本銀行が市中銀行に貸し出したりしています。
政府の銀行
日本銀行は、国が国民から受け取った税金や社会保険料などのお金の受け払い、国債のお金を預かって国が行う公共事業に使うお金、または公務員へ支払われる給与などのお金を出したりしてます。国から委託を受け、国のお金を管理しています。
そのほかの役割
「発券銀行」「銀行の銀行」「政府の銀行」の三つが日本銀行の主な役割ですが、そのほかにも日本の経済を動かす重大な役割を持っています。
次はそのほかの役割についてみていきましょう。
公定歩合操作
日本銀行が経済をコントロールする場合、「金融政策」がとられます。まず、一つ目が公定歩合操作です。「公定歩合」とは、市中銀行が日本銀行へお金を借りる時の「金利」のことです。
景気が拡大して、それを抑えなければいけない時。そういう時は、日本銀行はこの「公定歩合」を上げます。金利を上げることによって、市中銀行が日本銀行にお金を借りにくくするためです。そうすることによって、市中銀行は、企業に貸付する金利も上げることとなり、企業も市中銀行からお金を借りにくくなます。ですので、お金の廻りが抑えられ景気の拡大を抑えようとすることです。
逆に、景気が減退、つまり不景気の状態な時は、「公定歩合」を下げます。そうすることによって、企業が市中銀行からお金を借りやすくなり、お金が廻り、景気を上げようとすることです。ちなみに、今はこの「公定歩合」は、「-0.1%」となっています。
公開市場操作(オープン=マーケット=オペレーション)
次に、公開市場操作です。これは、日本銀行が金融市場で持っている国債などの有価証券を売買することをいいます。
買いオペレーションと売りオペレーションがあります。
景気が悪い時は、「買いオペレーション」を日本銀行は行います。日本銀行が、金融市場で流れている有価証券を「買う」ことによって、市中にお金が出ていき、お金の廻りをよくし、景気を上げようとすることです。
反対に、景気がいい時は、日本銀行が持っている有価証券を「売り」ます。売れば、金融機関がそれを買い、お金の廻りが滞り、景気を抑えようとします。当然、金融機関には有利な金利で買えることになります。
預金準備率(支払準備率)操作
日本銀行は、不足の事態に備えて、主要な金融機関から強制的に預金の一定の割合を無利子で預かっています。この預ける割合のことを、「支払準備率」といいます。
景気がいい時は、この支払準備率を上げます。そうすると、銀行は余計に日本銀行に預ける預金が増えてしまいます。そのため、銀行は企業へ貸し出す資金が減り、企業の活動が抑えられます。
景気が悪い時は、支払準備率を下げます。下げることによって、銀行は日本銀行への預かり預金が減り、企業への貸し出す資金が増え、企業は資金を借りやすくなり生産活動が活発になります。
日本銀行の経済レポート
日本銀行は、日本の経済の動向を注視するため、年四回(通常1月、4月、7月、10月)の政策委員会・金融政策決定会合を開きます。ここでの会議で、日本経済において先行き、物価見通しや上振れ・下振れ要因を精査し点検して、「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)を公表しています。景気判断も行います。
さらに、「統計」も発表しています。主なものとして「預金・貸出関連統計」「短観(日銀短観)」「物価関連統計」「各種マーケット統計」などがあります。
日銀が果たしている経済の役割
日銀の役割、つまり目的とは、「物価の安定」を図ることと、「金融システムの安定」です。ここに集約されます。
日本経済が混乱なく安定的に進むために、日本銀行の役割は大変大きなものとなってきました。もちろん、景気は必ず好景気・不景気を循環するものです。そこで、中央銀行が経済に介入して景気を下支えする。これは、国際的に認められています。なお、政策委員会・金融政策決定会合は、通常といいましたが緊急性を要する場合、月に関係なく開かれます。
日本銀行の動向・発表は、株価や為替に大きく影響を及ぼします。ですから、マーケット関係者はこの日本銀行の動きに、常に神経を張り巡らしています。
今、日本銀行は「物価」の目標を、「年2%」の上昇を目的としています。これは、「年2%」の上昇を維持していけば、景気が拡大して続くものだろうと見ています。しかし、これは今のところ達成できていません。
今、コロナ不況下の中で、株価も日本銀行が下支えしています。TOPIXといわれる株価指数を、買っています。年間80兆円の予算と計画されていましたが、この不況下で上限を撤廃し買えるだけ買えることにしました。さらに、不動産リート指数も買支えしています。「金融システムの安定」を図るため、日本銀行が動いているのです。
また、金融機関が健全な経営が行われているか、実態把握をするため調査も行っています。銀行や証券会社など、日本銀行の取引先に対して、資産把握、各種リスク管理状況、自己資本比率の充実度を見極めたりしています。直接、取引先へ立入って調査を行う「考査」と、面談や電話のヒアリングや関係資料の提出による分析などを行う「オフサイト・モニタリング」があります。「金融システム安定」のために、「最後の貸し手」として日本銀行が資金を供給しています。
さらに、「為替」の安定のため、日本銀行が動くこともあります。輸出で儲ける企業が多い日本経済にとって、「円高」はあまりいいことではありません。なので、過度の「円高」が進むと、日本銀行が「為替介入」をします。日本銀行が「為替介入」する金額は、そんなに大きくはありません。ただし、日本銀行が「為替介入」したとニュースだけで、インパクトがあるのです。マーケット参加者の資金を呼び、大きく為替は変動します。
このように、日本銀行は「通貨の番人」と呼ばれるくらい、日本経済にとって大きな役割をはたしているのです。